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フライス盤近代化作戦・まとめ


昨今進めてまいりました、フライス盤近代化作戦が完了しました。
この近代化作戦の目標は、①ベッドの照明、②XY軸計測のデジタル化の2点です。設計・施工は、機械部分が父、電気部分が僕です。

 

①ベッドの照明

ベッドとは被切削物を固定し、XYZ軸方向に動かす台のことです。汎用フライス盤では、エンドミルがちゃんと切れているか、見ながら切削していきます。なので、エンドミルと被切削物の接点を、しっかり明るく照らしたいということで、環状蛍光灯を使った照明を製作・設置しました。設置条件として、

  1. フライス盤回転軸の径(φ100)以上、軸部分筐体の径(φ230)以下の部分に設置できること
  2. 回転軸全周囲から照明でき、かつエンドミルチャックによる影がかからないこと
  3. 切削油、切粉等の飛散に耐えられること

の3点がありました。これに対し、LED、CCFL、蛍光灯を照明候補として検討しました。

CCFL(冷陰極蛍光管)については、設置条件1を満たすサイズのものがないこと、電源装置が高価なこと、光量が不足することなどから候補を外れました。
LEDについては、設置条件2を満たすために基板の製作が必要そうです。しかも、条件3を満たすために、ケースの製作が必要で、費用が嵩みそうでした。設置自由度の高さ、電源装置の低コストさは、大きなメリットでしたが、製作とメンテナンスに手間がかかりそうだったので、採用には消極的にならざるを得ませんでした。
蛍光灯については、全ての設置条件を満たす管形蛍光灯がありました。メンテナンスも簡単そうなので、使いやすそうでしたが、唯一、電源装置が高価なことが問題でした。しかし、電源装置は点灯用インバータが余っていたので、それを流用することにして、蛍光灯案を採用することとしました。(設置は電気工事士の資格が必要です)

蛍光灯は、回転軸筐体の鉢金みたいな部分の中に入っています。筐体自身がその年季の入り様から、なんだか都市用の迷彩色みたいな様子なので、父がその辺にあったトタン板を切って、照明カバーにしたら、結構似合いました。新品の材料を使うより、断然馴染みがいいです。蛍光灯の保持は、家庭用環状蛍光灯と同じくJ型の金具です。同じくトタン板を切って作りました。

電源装置(インバータ)は写真の白い箱の中に入っています。ON/OFFスイッチはメタルタッチセンサ式です。

 

②XY軸計測のデジタル化

計測ユニットに何を使うかは、いろいろ検討しましたが、コストパフォーマンスを優先して、Mitutoyo製デジマチック測長ユニットSDシリーズを採用しました。絶対位置測定方式で、精度0.03mm、分解能0.01mm±1digit、0~450mmの測定範囲で、定価¥45,000なら異存無しとなりました。ちなみに、こちらがX軸用で、ネットをうろうろしていたら、中古を発見した物です。新品の1/5の価格で手に入れることができました。

Y軸用は0~200mmの新品で、¥13,000です。これらの測長ユニットは、父特製のステー類によって、フライス盤に取り付けてあります。測長ユニットはボールエンドを使ってズレを吸収し、フライス盤筐体の電位に影響されないように電気的にもフロートさせてあります。

X軸・Y軸合わせて¥21,000で、計画より-¥36,000となりました。

 

この測長ユニットは、ご覧の通り、デジタルノギスみたいな構造をしていて、出来ればユニット外部に測定値を表示させたいところです。しかし、純正の表示ユニットは、1軸で¥30,000と来ていたので、これはもう自分で作るしかないということで、作りました。
測長ユニットから送られてくる、シリアル信号を読んで表示します。信号は、絶対位置情報しか持っていないので、ゼロ点設定機能は、表示ユニット側に実装しました。

回路のテストの様子です。マイコンは、8bitのPIC16F1827を使用しました。表示部分は、SPARKFUNのシリアル4桁表示ユニットに、ROHMの高輝度7セグLEDで、2桁足しました。通信ケーブルはさすがに純正です。1mで¥2500で、相対的に割と高価な感じもします。しかしコネクタが特殊で、手に入りそうもなかったので購入しました。


ケースは、電子工作界で著名なタカチ製です。フライス盤で、表示部分をくり抜いてあります。ボタンは0表示用のリセットボタンです。シリコンカバーも付けました。カバーがあると手作り感が薄まる感じがします。電源は100V用のUSB電源を、照明電源ケース内に入れてあります。費用は2軸分まとめて¥4,500でした。純正ユニットに比較して-¥55,000になりました。

実測で精度確認したところ、異常はなく、使用を開始しております。やっぱり、デジタル表示は便利だなぁと。ベッドも明るくてとてもいい感じです。

切削

なんだか、サバンナみたいになってますが…、エンドミルがあまり切れていないのでしょうか? 切削の技術にはあまり詳しくはないですが、切削時の音を聞いていると、切れているかいないかなんとなくわかります。切削面の面粗度も見ればなんとなく。触っても一切凹凸は感じないのに、見れば僕のような素人にもわかってしまいます。きれいに切削するには、職人的技術が必要なんだなと思いますが、最近は全部NCがやってくれるのでしょうか?

自分の知らない所でスゴい技術で作られた物が、その辺にお安く売られていると、もの作りに対する興味・関心・熱意などは発生するのでしょうか? 大学では基礎的な技術を理解した上で、その上に立脚した複雑で高度な技術を理解していくように教えられたものですが、今はどうなっているんでしょう? あまりに高度な技術がその辺のものにまで使ってあるから、基礎からの道筋は遠くなるばかりで、全てを網羅するのは困難なことは私でもわかりますが、モチベーションが少ない状態で、そのような困難な道を行けというのも高いハードルだなぁと。

自分の目の前で、興味をそそる出来事が起こるって、とても不思議なことのような気がします。