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ほこ×ほこ 再び

勇敢な工具のみなさん

1月1日に、ほこ×たてでドリル対金属の第5弾をやっていましたね。OSGの次は不二越という、もうあとは三菱マテリアルぐらいしかないという、順当な参戦でした。僕は不二越のドリル愛用者なので勝ってほしかったのですが、今回も金属の勝利となりました。金属もドリルもお互いにとんでもない硬さなのですが、こういった真っ向勝負では、やはり防御側が有利だと思います。世の中の硬い物質は限られているので、超砥粒以上の研磨剤が現れない限り、ドリル側は厳しいのではないかというのが僕の見解です。今回は超砥粒を使ったドリルで長時間ヘリカル加工するという作戦でしたが、それでも無理でした。硬い金属を削るのはそれだけ難しいということでしょう。形状がドリルでなくていいなら、回転砥石のようなもので、攻略可能だとは思うのですが…。

なんて対決を見て、元旦ぐらいは休んだのですが、2日からは仕事に入りました。SUS304の加工を父に行ってもらい、その後穴あけとねじ切りを僕がやることになったのですが、これがえらいことになってしまいました。相手がSUSなので気をつけていたつもりが、ねじ切りの途中でタップを折ってしまいました。しかもM3タップを…。父の見解では折れたタップの除去はまず不可能。ネットで見ても、絶望的な記事しか見つかりません。

こいつは正月からえらいことになりました。今年のおみくじは小吉だったのですが、なるほどさっそくそれらしい結果となりました。さすが神様はよく見ているものです。しかし、ここで諦める訳にもいかないので、いろいろ試してみることにしました。

まずハイスのエンドミルで、タップを切削する直接対決にもっていきましたが、全く歯が立ちませんでした。ネットによると、せめて超硬エンドミルを使わないと勝負にもならず、勝ったとしてもエンドミルが切れなくなってしまうということでした。超硬フラットドリルは一応1本持っているのですが、そのドリルでしか出来ない加工専用のドリルとして買ってある上、1本¥6000もするドリルなので、本当に最後の手段としてとっておきたいし、できることなら使いたくない…。というわけで、その後は古いドリルを研磨して専用工具をつくり、なんとか折れたタップを逆回しできないかチャレンジするも、ドリルが折れてしまいました。

タップは金属を楽々切れる工具鋼製な上、焼き入れが入っているという超硬い金属。しかも今回は防御側。金属勝負ではまず勝ち目がありません。そこで、ほこ×たてよろしく、こちらも研磨工具で対決を挑むことにしました。まずは手持ちのダイヤモンド砥石で勝負を挑みました。これはけっこう効果があったのですが、勝負を焦って送りを大きくしたら、工具が耐えられず曲がってしまい、使用不能になりました…。

仕方ないので、ホームセンターに行って、軸付き砥石2種とダイヤモンド砥石を購入し、勝負に投入しました。まずはダイヤモンド砥石を投入しましたが、あっという間にダイヤモンドの電着が剥がれて使用不能に…。これはもう不良品レベルの弱さで相当がっかりしました。しかたなく普通の軸付き砥石にしたのですが、これが大変有効なようで一安心。しかし、段々目詰まりして研磨できなくなってくるのと、回転中心付近の研磨速度が足りず、そこがつっかえてそれ以上進めなくなるという問題が判明しました。そこで中心付近に残る突起を別の砥石で研磨して、また掘り下げるという作業の繰り返しを敢行。1回でコンマ数ミリしか進めないのですが、それは本家ほこ×たてでもそんなものなので、しょうがないと割り切り黙々と作業を続けます。

もうそろそろ削りきるかと思った頃、軸付き砥石が急に沈み込み、砕けてしまいました。うわ、やってしまったと思い、砕けた砥石を除去したら、タップの先らしきものも一緒に出てきました。最後に削りきって、どこかに噛み込んでしまった模様です。しかしこれでようやく膨大な時間と工具をつぎ込んだ復旧はなんとか成功しました。これは本当に厳しかった。ステンレス用のスパイラルタップ1本、ドリル1本、軸付きダイヤモンド砥石2本、軸付き砥石1本を失って、折れたタップをやっと除去とは、何たるマイナス工数。せめてこれが厄落としになってもらいたいものです…。

ほこ×ほこ

予告どおり大変忙しく、サイト始まって以来の更新のまばらさですが、せめてもう少しは更新したいということで、公開しても差し支えない工具作りを公開してみます。

「ほこ×たて」という番組で、矛盾するふたつの物を対決させるという趣旨の企画をやっていますが、その代名詞になっているのが、ドリル対金属の穴あけ対決です。これはなかなか面白いと思うのですが、うちの工具作りがそれに似てなくもないので、紹介してみようかと思いました。

ある部品を加工するのに、どうしても市販の工具でしっくりくるものがありません。惜しいものは何点かあるのですがジャストではなく、しかたないので、少し改造して用いることにしました。そのベースになる工具は切削工具なので、結構どころかかなり硬い金属です。それはそのはず、硬い材料といえど、切削工具が負ける訳にはいくはずもない。ですから工具鋼や凝った表面処理を施したもの、超硬合金など、切削工具は硬い奴らのオンパレードです。

この方々に金属で真っ向勝負しても、良くて引き分け、基本的には負けることになるので、研磨で勝負するしかありません。ほこ×たての対決でも、ドリル側はこの戦略を採用しています。研磨工具から見て、肉を斬らせて骨を断つという、自らを削りながらも、相手を削るという敢闘精神に頼るしかありません。

では、切削工具対切断砥石のほこ×たて対決開始です。といいたいところですが、よく考えると両方とも切削工具の仲間なので、ほこ×ほこ対決のような気がします。だからまあ普通に決着はつくよな…と思いました。それはさておき。

対決開始
対決開始です。ご覧のとおり火花が散っております。「とろける鉄工所」によると、火花の散り方によって、含有している炭素の割合がわかるとか。火花が散った後、さらに破裂するように散っている散り方と数が多いほど、炭素を多く含んでいる、つまり硬いことがわかるそうです。さすがは工具鋼。かなりの炭素含有量です。なかなか切断砥石が進みません。この間、摩擦熱がたくさん発生し、アチチになります。アチチが過ぎると、工具の焼き入れが取れてしまうので、冷やしながら研磨します。そして無事切断完了。ほこ×ほこ対決は切断砥石に軍配があがりました。

先端を研磨
そして、先端をきれいに研磨します。これまた盛大に火花が散ります。

出来上がり
先端を丸めて出来上がり。これで作業がはかどるはず。大晦日と元旦ぐらいは休めますように…。